The Bookseller of Kabul (by Asne Seierstad)
これは大分前に読んだ1冊です。
ノルウェーの女性ジャーナリストである作者が、カブールで本屋を営む男性、スルタンとその家族の住む家に4ヶ月間住まわせてもらい、彼らが語る物語を記録した。
彼女は積極的に取材活動を行ったのではなく、生活を共にする中で、ふとした折に彼らが自ら語り始めるのをゆっくりと待った。そうして集めた様々なテーマについてのエピソードを、コラージュのように重ねながら、小説仕立てに仕上ている。
アフガニスタンは、完全な男性社会である。
ア
フガン女性は、家族外の男性と直接会話を交わすなど皆無に近いはずだ。そんなアフガニスタン社会の取材においては、作者が「女性」であるという事が、女性
達を取材するにあたって、とても有利に働いたに違いない。アフガン女性をこれほど赤裸々に描写できるような、そんな取材ができたのは、作者が女性だったか
らだ。
アフガン女性の生活のつらさ。そんな中でもささやかな楽しみをみつけるたくましさ。恋。かなわぬ恋。親に決められた相手との結婚。婚家での生活。ささやかな夢。かなわぬ夢。挫折。諦め。
そんなエピソードが次々と綴られる。その根底に、アフガン女性の「諦め」が感じられて切ない。
抑圧された人生。それを当然のこととして受け入れ「諦め」ている。それしか知らないのだから仕方がない。それが同じ女性として、切ない。
では、アフガン男性は?
作者は、アフガンの男性社会もうまく取材している。外国人でおまけに(おそらく)白人女性である作者は、特別扱いだったのだろう。男性からも様々な物語を聞き取っている。
男性も大変である。彼らも抑圧されている。そして男性はそれを当然の事として諦めてはいない。
抵抗している。悶々としている。いらだっている。
スルタンは本屋を営んでいるが、検閲で彼の店が取り扱う本の多くが違法とみなされ、破られ燃やされた。彼自身は何度も投獄された。彼は本を売る。本を持たない社会は文化を持たない社会だ。抵抗を続ける。
スルタンの息子はスルタンの所有する本屋の一つをまかされ、学校に行かせてもらえない。教育を受けることを望む少年は苛立つ。
男の子も大変だ・・・。
タリバンの16の法令(Decree)は男性にも厳しい。
一番大変そうなのは、「髭を剃ることの禁止」
髭を剃ったら投獄される。期間は「髭が握りこぶしの長さにのびるまで」
髭が生えないタイプの男性はどうするんだろう?アフガンには、そんな男性はいないのかな。
「イギリスやアメリカの髪型の禁止(男性)」というのもあるから、おしゃれな男性には
その他、意味不明な「凧揚げの禁止」、「絵や肖像画の複製の禁止(所持もだめ)」
これでどうやって経済がまわるのか不思議に思う「お金を貸し借りに金利を課す事、両替や送金に手数料を課す事の禁止」
ま
あこれはアフガン以外でもよく知られているSharia法(回教の法律)で、英国に住む回教徒同士が喧嘩する時、「お前なんか、酒飲んでるじゃないか!」
「そういうお前だって、住宅ローン組んで家買ったじゃないか!」と、お互いどれだけ回教の教えに違反しているかを指摘しあうそうな。
英国ではコンプライアンスモーゲージなる、回教の教えに違反しない住宅ローンの代替商品があるそうです。(詳細はよくわからないのです。説明を聞いても、あまり理解できなかったの。)
閑話休題
しかし彼らの受難は、それほど切なく感じられない。
所詮、男性は女性を虐げているのだから、当然の報いだと感じてしまうのか。
それとも私が女性だから、男性の受難は他人事なのか。
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